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3月9日 股いや又しても(2)。。。



やはり静かだ。
ただひとり事務所内で佇む自分に向かう音色は天井に設置された暖房機の運動音そして
壁に取り付けられた換気扇の風切り音のみか。
いや違う。
壁掛け時計の時を刻む音も明確に耳へ入る。
外からの騒音はたまにしか聞こえず飛行機そして自動車のエンジンそして走行音。

だが、総じて本来それのみで生きてゆけるはずの自然音は一体どこへ行ったのか。
いずれ自然音と人工音の区別など必要なく懸命にかき鳴らしている静寂なる
自然の音色を聞くことすら拒否する時代がやって来るのであろう。
もしかすると本来備わるべき人間と言う生物の聴覚の感覚は既に退化への道を
ひた走っておりそれこそ人間は一歩一歩生物と言う存在から次なる生き物への変遷を
辿っているに違いない。
自然界からひたすら隔離された未来の人類とは如何なる進歩を遂げのか。
それとも進歩とは全く逆の道を進むのか。

コーヒーカップを右手に取る。そして口に入れる。
味わいは紛れもなくインスタントであるがコーヒーである。
どうも紛れもなく私目はこの世でまだ生きているようだ。





さりとて生きているのであれば昨日の続きを書くことにする。
其れでは誰も読むはずもないそこはかとないある話をご堪能下さい。




それは突然だった。それは全く予想だにできるはずもない驚くべき出来事だった。

あいつは足を取られる。
街灯の薄明りのみを頼りに懸命に走っていたためそこに穴があるなど思いもしない。
右足を穴に取られ即座にそのまま落ちる。
瞬く間に全身が穴の中へ入り込みまっさかさまに落ち始める。
あいつは何が何だか分からない。突然の変化が無意識のうちに引き起こされた。

自分の体が地下へと落ちているのは分かる。
しかし周りは真っ暗で何も見えない。暗黒の空間の中体全身力を入れもがくがどうしようもない。
手に触るものなどなくあいつの体に当たる物などない。
落下速度は増すばかりで体は総毛立ち猛スピードで落ちているため呼吸することすら
必死にせねばならない。
地球の中心に向かい大きな引力があいつの体を引き寄せる。
どうしてこういう事態になったかなど理解しようがなくあいつは頭から果てしない地下の
空間を落ちる。
それこそ暗黒の地獄へと向かっているかのようだ。
そのうち意識すら朦朧とし出す。それほど長い時間真っ暗な空間をひたすらまっさかさまに
落ちている。
わずかな自覚出来得る意識の中あいつはあきらめる。とうとうあいつは投げ出す。
どう動こうと、どうわめこうが、どうもがこうが今起こっている事実がなんら変わることはない。
それどころかもはや体を動かす気力すらなくなっている。
一切の行動をやめ既に死を意識する。このまま死への道へとまっしぐらだ。

生きる事への執着がなくなるとさらに意識がなくなり始める。
目を開けることをやめ呼吸すらどうでもよい心地だ。
体の一切の力は抜けもはやもぬけの殻だ。

確かにあいつは既に疲れていた。
連日の休みなしの仕事。家では家庭を顧みない事への毎日浴びる小言。
冷やかな世間。零細企業は誰も助けてはくれない。
不安。心配。毎日胸が張り裂けんばかりにもがき苦しんでいた。

このままあの世にいけるのか。
あいつはわずかな意識のもとほっとした安らぎの心地を感じていた。
もうこれで心配などしなくて良いのか。もうこれで何もかも終わりなのか。
とうとうあいつの意識はなくなりただ時の流れに身を任せ落ち行くのみだ。


ところがだ。。。


股いや又しても次回へ続く。。。




それでは又です。


読破中。
「創造する経営者」P.F.ドラッカー著。


読破中。
「夏への扉」ロバート・A・ハインライン著


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2008.3.9by 博多の森と山ちゃん




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