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2007年12月24日

12月24日 我らが職人は何でもこなす。。。そして今日は。。。



我が九州は福岡、博多の町工場の職人は何でもこなす。
溶接、旋盤、機械加工、そして現場作業と多種多様な仕事に精を出す。
出来るからこそ職人と言える。



















あいつは前日前置きのみ記して逃げ帰ったようだ。
ようやく本日イニシャルH形SF物語はクライマックスなるものを迎えるようだ。
前回までの2話については大変ご面倒ですが下記クリックの上ご覧頂ければ
幸いでございます。いずれも2頁目に記載しております。

第1話 12月19日 我らが職人は汎用旋盤で材質砲金を切削しながら切断。

第2話 12月21日 パイプ面取り機試運転開始。

それでは最終話ですばい。


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あいつ女性専務のすらりと伸びた短いスカートより輝く白い肌の2本足で立ちはだかった場所
からまともに目の前に歴然と存在するその姿は紛れもない。
そこはものづくりの愛と魂が溢れんばかりに満ちている場所であり
零細町工場でありながら我らが職人が途轍もなく熱いものづくり情熱をいかんなく
発揮している輝いている場所だ。
美貌の上に淡い口紅がひとしおのしおらしさそして艶美を醸し出しているあいつ女性専務は
思わず足を踏み入れようとした。
だが躊躇する。
「俺は時空移動で火星へ行くつもりだった。ところが何故我が町工場へ辿り着いたのか。」
あいつは訝しく思いモジュールへ問いかける。
「おい。モジュール。いったいどうなっているのか。」
モジュールからは相変わらず感情のかけらもない機械的発音が返って来る。
抑揚のない声の単純なリズムは人間ではないのだから仕方がない。
「今だ火星接近による潮汐力の分析が終わっていない。
この解析を終えればブラックホール無重力空間との整合がとれ即座にニュートラルネットの
ノード接点の不具合は修正されるはずだ。今しばらく待ってくれ。」
「いや。そうではない。今なぜ我が町工場の前に俺がいるのかを教えてくれ。」
「それはおかしい。お前の今現在の存在はブラックホール空間を彷徨(さまよ)っている
暗中模索の状態だ。俺、機械モジュールの制御理解範疇であればお前の視界は真っ暗なはずだ。」
「いや。確かに目の前には俺の町工場がある。
この工場より漏れて耳に入って来る音は汎用旋盤の切削音。フライスの削り音。
それにCO2半自動溶接時の音に間違いがない。」
即座にモジュールより答えが返される。
「俺の今現在の学習効果による人類把握内容から推測する。
全人類接続された機械信号制御ネットに人間の感情までがいつしか入り込みその感情が
ネット機械信号を変化させた。しかし、制御機構である俺たちには人間の感情は理解できない。
それはあくまでも人類、人間が製造した機械に過ぎない。これが答えだ。
俺には時間がない。即座にニュートラルネットの信号回路を回復させねば時空制御に
大いなる欠陥ができる。」
それ以降モジュールへいくら話しかけようと無駄だった。

では俺の視覚を刺激し存在する町工場は本物ではないのか。
あくまでも俺の感情、思い込みが登場させたバーチャル、仮想の姿なのか。

あいつは日常と同じ動作で我が町工場へ足を踏み入れる。
やはりいつもの場所でありいつも見る光景でありいつも聞く音だ。
まさしく我が町工場でありとてもこれが脳神経制御による仮想空間には決して思われない。
奥へ進むと化粧が濃い女工場長は一心不乱に半自動溶接を行っている。
手前ではうら若き職人が香水の匂いがきついベテラン女職人の厳しい指導のもと
TIG溶接に励んでいる。
入口から左方向へ進むと切削油と化粧の香りが相俟って独特の匂いを放ちながら
汎用旋盤へ女職人は脇目も振らず向かっている。
間違いがない。いくら周りを見渡そうと我が零細町工場であることには決して誤りが
あるはずがない。

だが不思議なことにあいつ女性専務が何等製作の指示は出していない
製品が次々に作り出されている。
あいつは図面を書いた覚えがないが既に作り終えたものづくり製品が所狭しと置かれている。
特許申請中コンベア式乾燥機。開発中の振動式回転トロンメル選別機など。
数多くの製品が工場の中を最早自由に身動きが取れないほどに置かれているのだ。

よく見ると気が付く。何度も眺めるうちにあることに気がついた。
町工場中を占領している製品は途轍もない大型の箱状の容器に入れられている。
その容器の前方には人間一人は座れるだろう椅子が設けてある。
それらはこれまたとても太いワイヤーで4本足のロボットにつながれている。

ようやく理解できた。やはりそうだ。
前方に一人座れるように椅子が設けてある箱状の大きな容器を4本足の馬型ロボットに
太いワイヤーで接続されている。
4本足ロボットが足を踏み出す毎に繋がれたのづくり製品で満たされたその箱型容器は
一緒に前進するだろう。
どうも容器の前の椅子は誰かが座りそのロボットを操作するに違いない。
なんと表現すれば良いのだろう。
それはまさしく馬型ロボットが引っ張る巨大そりと言えば良いのだろうか。

あいつはしばらくその様子を眺めていたがその結論以外には何ら思い浮かばない。

ふとあいつに気がついた濃い化粧に匂いがきつい香水をつけた女工場長が話しかける。
「もう完成だ。何とか今日という日に間に合った。あの椅子に座ってみてくれ。」
あいつ女性専務は頭をかしげながらもゆっくりと今までじっくりと眺めていた
その巨大そりの椅子に座る。
あいつはゆっくりと座る。座ったスカートからはみ出す綺麗な美しき白いおみ足は相変わらず
まばゆい。

その瞬間だった。その椅子に座って腰を落ち着けたその瞬間だった。
あいつはまたして決して遮ることができない空間に引っ張られる。
周りの空間は瞬く間に真っ暗になり渦状、スパイラル状に強大な力で身が捩(よじ)れんばかりに
引き込まれる。
呼吸することさえ苦しくなり意識が朦朧とし出す。
あいつを瞬時に襲った何一つ抵抗すらできない渦状の爆発的な力が発揮された時間は
それほど長くはなかった。ほんの短い時間にすぎなかった。
それでもその強大な力はあいつの意識を奪いさるには十分だった。


あいつは目が覚める。
しばらくは意識は朦朧としたままだ。頭痛がひどく吐き気さえする。
だが次第に自分はだれであるかが理解できるようになり本来の視覚が戻ってくる。
体内に備わった五感が時の流れに沿って次第に明確になりつつある。
どれほど時刻は経過したのだろうか。
あいつはどうもどこかに潜っているようだ。
全身を砂状のもので覆われている感がする。
まずは視覚が目の前の赤い色を刺激する。
何とか呼吸は出来るようだ。ようやく体全身に力が入るようになる。
全体力を奮い出し地中に埋まっていた体を空間へと出す。
地中から全身を出しその大地に2本足で立つ。

あいつは分かった。身を起しその地上に立ったその瞬間その場所がどこであるかが。
まさしくそこは火星だ。酸化鉄で覆われた真っ赤な衛星火星に間違いがない。
ようやくたどり着いたのだ。どうしても行きたかった星、火星へいよいよ到着したのだ。
ふと我が身を眺める。
酸化鉄の地中に埋まっていたのだ。もちろん全身は真赤だ。
頭にかぶっているヘルメットさえ真っ赤に変色している。
不思議な心地がする顎を触るとどうも髭が生えているようだ。
見ると真っ白な正三角形のふさふさした鬚だ。
あいつは周りを見渡す。
先ほどまたがったはずのそりは既に横で待機している。
たくさんの様々な種類の我が町工場で製作された製品は五万と乗せられたままだ。
そのそりにつながれた馬型ロボットは4本足で立っている。
ロボットの鼻は酸化鉄の影響だろうか。鼻だけが真赤だ。

あいつは誘われるようにあいつは磁石で引っ張られるようにそりの前の椅子に座る。
とたんに突然だ。驚く余裕すらなく即座に真っ赤な鼻のロボット。
それにつながれたそりそしてあいつは空中に浮かぶ。
あいつは馬型ロボットを制御するためであろう既に自分の手でつかんでいる紐を力強く引っ張る。

さあっ。出発だ。
勢いよく町工場の愛と魂がふんだんにこめられた製品をできる限り乗せて出発したのだ。
もちろんベルを騒がしくかき鳴らしながら。
あいつは青い星地球に向けて元気一杯、破顔一笑精一杯の笑顔で出発したのだ。
そして遥か遠くの我が星地球に向かって大声で叫んだ。


「メリー    さんと羊。」
いや。。。




「メリークリスマスッ!!」




それでは又です。


読破中。
「経営者の条件」P.F.ドラッカー著
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・デイック著


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2007.12.24by 博多の森と山ちゃん