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2007年11月16日

11月16日 足早。。。



夜明け前だ。目を覚ますとどこかしらけだるさを感じながらも起き上がる。
寝室を抜け出すと暗闇が覆う空間を二本足でフローリングの床を静かに踏みテラスへと向かう。
暗黒は一切の情景を打ち消し自分の存在だけを認識させるためだけに君臨している。
この漆黒は本来持つ五感を意識させる時間を出来るだけ引き伸ばすために存在しているのか。
何も存在しないのが本来の存在であり目に見える物は本来実在しない架空そのものでは
ないのか。





存在感を打ち消してくれる地上に漂う黒と言う可視光線を存分に浴びながら
等身大の窓を開けテラスへと出る。
雨だ。しとしとと雨が地面を濡らす。ひっそりとしっとりと雨足はあまり強くはない。
しかし空一面に覆いかぶさった灰色の雲からひたすら落ち行く水滴は束になって
地上に聳え立つあらゆるものを存分に濡らす。
その雨音は小さく、かすかな音色ではあるが、その姿はしぶとくねちっこい。

雨雲により放射冷却の現象は遮られ生暖かい。
到底今の季節の早朝の気温ではない。
この星青の地球が突き進む方向を汲み取れとばかりに我が人類に訴えかけているかのようだ。

あいつは大気の大部分を占める窒素を大きく吸い込み僅かな二酸化炭素を吐き出す。
体を占有している全ての廃棄物を吐き出すかのごとく大きく息を吐く。

あいつは空を見上げる。雨の水滴一粒一粒を眺めながら囁いた。
顔は上げられ今だ上空を見入ったままだ。

「俺も雨になって流れて行きたい。地球の引力のまま地上に落ちそして流れいつしか
水蒸気となって空へと戻る。自由気ままにただ流されるだけだ。」

暗闇の中から声が聞こえる。それはあいつの影だ。
「それは逃げたいと言うことか。」

「いや違う。自分の確たる意識のないまま流され漂いたい。」
「それは自分と言う存在を否定しているか。」
「違う。ある生き方の提示だ。」
「その理由は一体何か。」
「疲れだと思う。体が重くつらい。」
「それは精神的あるいは肉体的にか。」
「区別は出来ない。人間の体はひとつだ。ある意味限界を感じている。楽をしたい。」
「それは楽を履き違えている。」
「どういう意味だ。」
「人生には楽など存在しない。それはまやかしに過ぎん。」
「であればどうも楽と言う言葉は当てはまらない。そうだ。逃げたい。逃亡したい。」
「逃げてどうする。多分状況はなおさら悪くなるぞ。」
「とにかく立ち去りたい。この場で呼吸することすらつらい。この場で立っていることすら
体が拒否し鳥肌が立つ。」
「耐えれば。」
「いやもう十分だ。出来る限り耐え忍んだ。ひたすら我慢続けた。」
「世間はそう見ないぞ。」
「その世間と言う言葉の存在価値は俺は見出せない。
今の世間は偏狭で独りよがりだ。一旦事が起こると一斉に騒ぎ立て責め立てる。
優しさ安らぎはなく冷酷で残忍だ。」
「だから世間と言うのではないか。」
「よく分かる。俺は何も人に迷惑を掛け一人で生きて行こうなど思ってもいない。
ただ今のこの場から立ち去りたいだけだ。」
「苦しいのか。」
「そうだ。苦しく泣き叫びたい。背中に背負ったおもりは果てしなく重くもう支えきれない。」
「周りは許さないぞ。」
「ではどうすればいいんだ。」
「耐えるだけだ。」
「それはもう出来ない。限界だ。」
「今まで耐えてきたのでは。限界とはそう思った時点でなくなるのでは。」
「そんなことはない。限界と言う言葉は存在する。。。いや確かに一理あるな。
もしかしたら限界は夢、幻なのか。決して自分自身の手で摑めない。架空のものなのか。
しかし最早だめだ。ここでは限界と言う言葉を使いたい。もう限界だ。。。」




それ以降陰の声は聞こえない。


しかしあいつはこれからほっとする瞬間を味わうことが出来る。




あいつは足早にトイレへ向かった。




それでは又です。


読破。
「ダウン・ツ・ヘヴン」森博嗣著。
まるで本当に戦闘機に乗り込み銃を相手に打ち込んでいるような錯覚をさせる。
最後のあとがきを実際のエアーショーパイロットが記しているのに驚く。
森節を存分に堪能させて頂いた。


読破中。
「女王の百年密室」森博嗣著。


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2007.11.16by 博多の森と山ちゃん



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