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2007年05月23日

5月23日 今回は不安なんです。。。。



客先に向かう車中で作業着胸ポケットに入れた携帯電話から音が鳴り出す。
「誰からだろうか。」
しかしハンドルは握られ続け、アクセルレバーを踏み込まれた右足は決してはずれることなく
車はアスファルトの道をひた走る。
まるで電話から鳴り響く音色には全く興味を示さぬかのように。





「ここで止めよう。」
やはり気には掛けていたのだろう。
進行方向左前方のコンビニの駐車場が目に入ると呟いた。
駐車場に向かって左にハンドルを切りゆったりとした速度でその開いたスペースへと
車を向かわせそしてほぼ真っ直ぐな方向そして前向きのまま止める。
完全に停止した自動車からは降りようとはせず、作業着上着のポケットに左手を入れる。
そして黒色のドコモのデザイン入りの小さな携帯電話を取り出す。
電話の上面を開けボタンを押すと着信履歴を確認する。
確認するやいなや即座にその人物の履歴を2回押した。
呼び出し音の繰り返しの回数は少なかったはずだ。
聞きなれた声に心が和む。
「お元気ですか~。」
「あの案件は消えていませんから。もう少し待っていてくださいな。」
短い会話の内容はある案件の途中経過の連絡だった。
私からは相手に対しては殆ど相槌の声を放つだけだった。
それでも会話として成り立ったのであろう。
「社長によろしく。」との声を最後に電話主の声は消えた。
この案件が始まったのが去年の末だ。かれこれ既に半年は経過したことになる。
大きな案件だけにすんなりとは行かないとは承知していた。
又、担当者からは色よい返事は既に耳打ちされてはいるのだが。
会社の規模が大きければ大きいほど目の前に注文書の書類が現れない限り、
現実の事実とは理解できないものだ。
決して人は疑いたくはないのだが、否応なしに組織に従ざるを得ない場合が多々あることを
身をもって経験しそして見知っている。
その本人の判断のみで実行できれば何ら問題はない。
しかし、本来の組織たる存在はその一員であれば誰も無視などできるはずもない。


電話を再び上着の内ポケットにしまいこむとまずは車を後進させ、ハンドルを切る。
進行方向に向かった車の窓より道路を走る自動車の往来をしばし眺める。
車の列が消え去ると即座に道路に突っ込みそのままアクセルを踏みしめる。


「今回は不安なんです。」
到着した客先で相手の担当者へ心情を正直に吐露する。
確かに数字の上ではうまくいくはずだ。
しかし、実際稼動した際どうであるかが最大の関心事だ。
今回の案件も実際動かしてみないことには結果は出ないであろう。
客先の求める結果は常に成功であるしそれは当然至極な事実だ。
過去経験、体験した内容であれば誰しもが即座に二つ返事で回答するだろう。
今回も比較検討する題材はないことはない。
それはどこまでのレベルを求めるかにより当然ながらその対応は変化する。
誰しもが最高を追い求めるのは私自身もそうであるがために決して否定はできない。
まずは試作という判断もあるのだが。
それには当然金銭がからむ。
誰しもが金額的負担は避けたい。
さすれば結局最初が本番となりそしてそれが最終到達点となる。
未経験な内容に対してはやはり不安であり心配だ。
そこから逃げることはいとも簡単だ。
しかし、逃げてばかりではものづくり屋としての使命をないがしろにしてしまう。

「うまくいかなくてもいいですよ。」
この言葉にいつも惑わされる。
実際ものづくりを行いそして動くまでの責任は全てこちらにある。
相手にしてみればうまくいかなければ、お金を払わなければよい。
そしてうまくいくまで待てばよい。
あるいは失敗した業者をあきらめ他を探すこともあり得る。

今回はどうするか。
挑戦という2文字は私の脳裏からは常に消え去ることはない。
但し、今回の案件だけはどうしても腹が据わらないし、腑に落ちない。
それは誰からも命令、指示を受けた訳ではないが頭ではなく体内部から脳細胞へ指示を出す。
過去腑に落ちない案件でも常に何とか稼動へとこぎつけた。
お金という最も重要な事実は常に付付き纏う。
しかし、挑戦という二文字と腑に落ちないとの相反する気持ちの葛藤は日常茶飯事であるし
他にないものづくりを目指し実際地道に歩んでいる以上致し方のないことであろう。
お金がない我が零細町工場にあるものは何であるのかという疑問に対し、一体いつその回答が
出るのだろうか。
それは他人に求めるのではなく将来の結果がその回答であるのは理解しているつもりだ。
別段急いでいる訳ではないが、生来の気質だろうか即座に求める。
では今現在その案件どうするか。
腹にすわりそして腑に落ちる。さすれば実行そのものが挑戦。
目の前にありありとその結果が何故か浮かび上がる。


時は常に流れる。
自分自身に聞こえてくる声を待つしかないであろう。
いつものごとく。




それでは又です。




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読破中。
「素粒子と物理法則」R.P.ファインマン、S.ワインバーグ著 小林鉄郎訳

読破中。
「家族狩り 第三部」天童荒太著



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2007.5.23by 博多の森と山ちゃん