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1月6日 あの坂は登れるのか。


やはり天気予報は当たった。
予想が外れる事を期待したのだが。。。。





今日作業を行う現場は雨だけは何とか防げる。
しかしながら、横風はまともに体を襲う。
吹き抜ける冷たい風は容赦なく作業を行う職人を吹き飛ばすが如くに力強い。

力を振り絞りコンクリートの柱へハンマードリルでアンカーの穴を掘る。
「このコンクリートかなり硬いぜ。」
全身の重量をドリルへ掛けるため、体全体が穴を空けるドリルの振動と共に震えながら呟く。
「なかなか開かんばい。」
何度もドリルを前後に動かしながら渾身の力で掘り続ける。

「ふ~っ。やっと一つ掘れたばい。」
その言葉を吐いた瞬間、隣でその様子を見つめていた職人は身を乗り出しながら話しかけた。
「変わろうか。」
その言葉が終わる頃には、ハンマードリルを溜息をついている職人の手から奪っていた。
早速、コンクリートの柱にドリルのキリを立てドリルの回転スイッチを右手の指で押さえ
掘り始める。
掘り初めからなかなかドリルのキリは先へ進まない。
「確かに硬いばい。」
この職人も体全身の重量をそのドリルへ載せ、必死に回転しているドリルのキリを前進させる。
それでもほんの僅かずつでしか掘り進まない。
ドリルを前進させては後退。前へ進めては後ろに下げる。
その動作を何度も繰り返す。
ハンマードリルの振動が容赦なく体全身を襲う。
その振動のせいだろうか。
次第に腕の感覚がおかしくなっていくのを感じる。
両腕の神経が高ぶりその感覚はまるで麻痺していくようだ。
次第に、手そして腕の感覚がなくなりまるで他人の手を利用して必死に穴を開けているようだ。
それでもその職人はあらんばかりの力を降り注ぎ必死にハンマードリルを動作させる。

「もう少しだ。」
既に寒さは感じていない。
横殴りの風はその職人にとっては既に涼しく心地よく感じる。
必死の形相で振り絞った力を出し切りようやく一つの穴が掘れた。
「ふう~。」
思わず一呼吸を置く。

「今度は俺がするばい。」
その言葉が耳に聞こえてくる頃には既に手許にハンマードリルは先程の職人の手に渡っていた。
すかさずコンクリートの柱から穴を開ける音が耳元に伝わる。
感覚が麻痺していた両腕が次第に自分自身のものだと明確になり始める。
それと共につい先程まで涼しく感じていた冬の横風がひとしをの冷たさで体を包み始めた。
「やっぱり今日は寒かばい。」
そう一人心地で呟く。
体を襲っている寒中の風の冷たさはさらに全身の体温を奪っていく。
ハンマードリルのけたたましい騒音が止むと途端に、その職人の手は掘り終わった職人の手より
ハンマードリルを奪い返す。

その職人はハンマードリルを前後にやりながら独り言を呟いていた。
「はよ終わらせないかんな。夕方から雪が降るという予報やったな。」
しかし、先程の職人は聞いていたのだろうか。
静かに答えるように語った。
「今日は。はよ終わらせな明日は別の現場ばい。」
「しかし、もし雪が積もったらあの坂は登れるやろうか。」
語り終わると次なる順番を体を既に横風の寒さに震えながら待っていた。




それでは又です。




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読破中。
「樅の木は残った 中」山本周五郎著。
静かな小説です。


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2007.1.6by 博多の森と山ちゃん



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