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2006年11月21日

11月21日 ローラーのシャフトは何故折れるのか。



頻繁ではないがたまに受ける相談がある。
その内容はローラーのシャフトが折れるというものだ。
回転式選別機トロンメル、あるいはロータリーキルンの回転体を支える受けローラー、車輪の
シャフト、軸。
あるいはコンベア部品であるプーリー、ドラム。
これらの軸が破損するいう事だ。
もちろん弊社製品で起きた過去はない。


今回はその原因を探ってみた。
もちろんご批判、ご意見お気軽にお寄せ下さい。


参考としてローラーを又してもスライドショーにて掲載しとります。














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本論に入る前に先ず溶接について記したい。

溶接といっても様々な方法がある。
町工場では一般にアーク溶接が行われていると思う。
そのアーク溶接のなかでも手棒、TIG、MAGの3種類の方法で日頃作業を行っているはずだ。

九州は福岡、博多の我が町工場でも現場工事では手棒での溶接、
工場内ではTIG、MAGによる溶接を行うことが多い。
ちなみにTIGはアルゴンガス。MAGは炭酸ガスを使用する。

溶接でも禁止事項がある。
ただ闇雲にやれば良いのではない。

我が町工場へも試験者が来訪され、下手すればチョークでバッテンマークを付けられる。

では禁止事項とは一体どういう行為なのか。
ここでは外観上の欠陥と言う表現を使用する。

1.オーバーラップ
  溶接面が重なり溶接棒、ワイヤーが溶け込んでいない。
  私たちは俗に「ダゴ」と呼んでいる。
  半自動CO2 MAG溶接で行うと、見かけ上は「ダゴ」ではないのに実際は溶け込んで
  いない場合がある。
  それだけMAG溶接は簡単に覚えられるが、注意が必要だ。

2.アンダーカット
  溶接棒、ワイヤーが溶け込み過ぎ、あるいは溶接速度が速い為に見かけ上はへこんだ
  ように見える。
  溶接ビードが溶接面に十二分に行き渡っていない。

他にも「溶接面の割れ」あるいは「スラグの付着」等も掲げられると思われるが、これは
溶接検査を受ける以前の溶接の腕の問題だろう。


では何故、先ず溶接について触れたのか。
実はシャフトが折れたローラーはいずれも溶接により接合した製品だったからである。

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では本論へ

先ずはシャフトの材質について。


1.シャフト、軸の材質について

 一般に鉄で言えばシャフトには炭素鋼が使用される。
 鉄といっても材質は様々だ。
 炭素鋼とは俗に言う鉄板、圧延鋼材とは異なり炭素が多く含まれる。
 炭素分が多いとそれだけ硬さ、強さが増す。

 炭素鋼でもその含まれる炭素の量により材質の記号は異なる。
 例えば炭素の量が全体の約0.25%であればS25C。
 約0.35%ではS35C。そして約0.45%含まれていればS45Cと言う記号になる。
 一般的にはこの3種類の炭素鋼が使用されると思う。

 シャフト、軸で使用される材質はS35Cが多い。

2.熱処理

 炭素鋼は熱処理されることが多い。
 熱処理を施すためにこの材質を選択する場合も数多くある。
 
 この熱処理により、材質の特質が変化する。簡単に書く。
 ここでわざわざこの項目を設けるのは、今後の内容に関連するからだ。
  
 1)焼きならし
  高温で加熱し、空中に放冷する。
  引っ張り強さ、じん性が向上する。
 
 2)焼きなまし
  高温で加熱後、炉内、灰中で徐々に冷却する。
  引っ張り強さ、降伏点は下がるが、伸び、絞りは向上する。

 3)焼入れ
  高温で加熱後、水、油等で急激に冷やす。
  著しく硬さが増す。

 4)焼もどし
  3)の焼入れの状態では硬いがもろい。
  そのため再度適当な温度で加熱し、粘り強さを回復させる。


3.シャフト固定について

 ローラーの構造はドラムあるいはロールにシャフト、軸を突き通した簡単な構造だ。
 ロールとシャフトを固定する方法として下記方法が上げられる。

 1)焼きばめ
  ドラム、ロール本体を高温で加熱し、膨張させる。
  本体の穴が熱により大きくなった際に即座に軸、シャフトを入れ込む。
  我が町工場の焼きばめの様子は旧ブログ「2月22日 焼きばめですかな。」をご覧下さい。
  弊社ではこの方法を頻繁に使うが、同時に上記焼きならしの効果も狙っている。
 
 2)削りだし
  ロール、シャフト一体形。
  全て切削加工で製作する。
  時間と金額を要する。

 3)キー溝固定
  キー溝を掘りロールとシャフトをキーにより固定する。
  但し、四角形キーの場合、エッジにつまり角に回転時の応力が集中する。
  キー溝そしてキーをR加工し、なるべく時間経過と共に発生するキー溝が大きくなることによる
  両物のずれを防ぐ方法を取る場合もある。

 4)溶接固定
  ドラム、ロール本体とシャフト、軸を溶接により固定する。

  この構造のローラーのみシャフト破損が起きる。
  特に溶接面にこの現象が見られる。
  固定方法では最も簡単だがそれだけにこの方法には溶接後の対処が特に重要と言える。


3.溶接固定により起こる現象
 
 我が町工場での溶接作業は全て職人によるアーク溶接だ。
 このアーク溶接は溶接すべき(+)プラス極と溶接棒、溶接ワイヤー(-)マイナス極が
 触れ合うと発生するアーク放電により接合する事だ。
 簡単書けば空気の絶縁破壊、つまり通常は電流が流れない空気に電流が流れる 
 放電により高温で接合すべき金属を溶かして接合させると書いときます。
 詳細説明は私には少々むずかしかです。

 そして溶接面を溶接時は必ず差し出すのは、アークの光の中の赤外線が目に非常に悪い
 影響を与えるためで、長期間受けると失明の危険もある。

 本題に戻す。

 このアークの温度は2500~3000℃もあるらしい。
 その高温による急激な溶融そして凝固により歪みが発生する。
 その溶接後の歪みについてはどこの鉄工所も考慮した上で溶接作業を行う。
 この歪みは溶接することによる応力が原因らしい。
 
 そして特に今回の題目で忘れてはいけない影響がある。
 それは熱である。溶接時に発生するかなり高温の熱だ。
 ある意味溶接時の高温の熱である種の熱処理が行われたとも書けるのではないだろうか。
 今回取り上げたローラーは材質としては、通常熱処理も行える炭素鋼が使用される。
 炭素鋼であれば上記に記した通りなおさらだ。

 上記2の項目で言えば溶接時の温度からみると1)と3)の中間くらいだろうか。
 私たちはこの現象を通常「焼きが入った。」と言う表現をしている。


4.結論
  溶接後の熱処理が原因と想定する。

 それでは溶接構造でのローラー製作にはその固定方法に問題があるのか。
 それは全くないと断言できる。
  
 ロールとシャフトを溶接接合するとその溶接部分には焼きが入り材質が変化し硬くなる。
 硬くなると逆に粘りがなくなりもろく折れやすくなる。
 
 そのため通常炭素鋼の溶接後は焼きもどしを行う。
 溶接接合後、再度ガス等で適度な温度で加熱し粘りを回復させる。

 結局のところあくまでも私見の結論ではあるが
 溶接後の焼きもどしが十分に行われていない。
 あるいは焼きもどしの際の加熱温度が適当でなかった。

 これを最後の文章としてこの題目については終了したい。
 是非皆様のご意見を拝聴できれば値千金で嬉しく思います。
 お気軽にご批判を。


 参考文献 「機械工学必携」馬場秋次郎編 三省堂
 参考サイト フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』




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備忘録。
読破中。

「MOMENT」本多孝好著
現代では当たり前の透明な文章も特徴かな。




それでは又です。




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 皆様いつもお世話になり有難うございます。
 私は溶接で私自身にくっつけて欲しいものたくさんあるブログあるはず。
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2006.11.21by 博多の森と山ちゃん